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♪Lucrezia Borgia「ルクレツィア・ボルジア」

by hidepost, le 3 déc 2012

作曲:Gaetano Donizetti (ドニゼッティ 1797~1848)

 

あらすじ

プロローグ 
ヴェネツィア大使一行が、フェラーラ公国を訪れる事になり、出発の前夜、ヴェネツィアの軍人ジェンナーロ(テノール)、リヴェロット(テノール)、ヴィテロッツォ(テノール)、高官のマッフィオ・オルシーニ(アルト)ら随行の若者達は祝賀会で酒を酌み交わし陽気に騒いでいる。酔っぱらったオルシーニが、いつものように、フェラーラを治めるアルフォンソ公爵の妻ルクレツィア・ボルジアの悪行を並べたてる。やがて若者達は立ち去るが、ジェンナーロは一人ベンチで眠りこんでしまう。すると、そこに仮面を着けたルクレツィア(ソプラノ)がゴンドラに乗って現れる。彼女は仮面を外し、愛情深い眼差しで、眠るジェンナーロを見つめ「なんと美しい」と歌い、アルフォンソ公爵のスパイが窺っているのも知らずにジェンナーロの手に接吻する。目を覚ましたジェンナーロは目の前に美しい婦人が立っていることに驚き、聞かれるままに生い立ちを語るので、ルクレツィアは、彼が 自分の息子であることを悟る。その時 オルシーニ達が戻って来るので彼女は慌てて仮面をつけるが、オルシーニは この女こそが、彼の一族を殺したルクレツィア・ボルジアであると非難する。ついにルクレツィアは仮面を脱ぎ捨て「そうよ、私はボルジアの女!」と叫び、ジェンナーロ以外の若者達に必ず復讐すると誓う。一方、ジェンナーロは美しい婦人に思慕の情を感じていただけに、ルクレツィアの正体に衝撃を受けるが、まさかこの女性こそが生き別れになっている実の母であるなどとは思いも及ばない。

第1幕 第1幕
ボルジア家の為に政略結婚を強いられてきたルクレツィアにとって、フェラーラ公爵アルフォンソは3人目の夫である。アルフォンソ公爵(バス)は、家臣ルスティゲッロ(テノール)から、妻ルクレツィアとヴェネツィアの若き軍人ジェンナーロが逢瀬を重ねていると報告をうけ、2人の仲を誤解して、復讐の機会を窺っているのである。
そんなこととは知らないジェンナーロは、仲間のオルシーニらと結託し、アルフォンソ公爵の宮殿に掲げられていたボルジアBORGIAの文字から剣でBの字を切り取ってORGIA(破廉恥な宴)とし、ボルジア家を侮辱する。当然のことながらアルフォンソ公爵の命令でジェンナーロを見張っていたルスティゲッロに取り押さえられ、宮殿に連行される。
一方、ルクレツィアは誰かにボルジアの家名を汚された事に激怒し「今日と言う日が終わる前に!」と歌い、犯人を厳罰に処すように夫アルフォンソ公爵に要求する。いよいよ犯人としてジェンナーロが引き立てられて来ると、ルクレツィアは驚愕し、何とか息子の命だけは救おうと処刑の中止を懇願する。態度を豹変させたルクレツィアに対し、アルフォンソ公爵は「ボルジア家を侮辱した者の命を何故救いたいのか」と不審がって見せながらも、内心はルクレツィアが不倫相手を自ら処刑する皮肉な運命に満足の笑みをうかべる。ジェンナーロが退席し、「処刑方法は剣か毒か」と迫る夫の残忍な思惑を知ったルクレツィアは毒殺を望み、解毒剤を用意して処刑場に臨む。真相を知らないジェンナーロは毒入りワインが運ばれると、和解の杯と思いこみ、いっきに飲み干す。復讐を果たしたことを見届けたアルフォンソ公爵が立ち去ると、ルクレツィアはジェンナーロに駆け寄り、急いで隠し持っていた解毒剤を飲ませ、至急この地を離れるようにと言って、彼を秘密の扉から逃がしてやる。

第2幕
逃げ帰ったジェンナーロは、今夜中にフェラーラから離れる準備をしている。そこに仲間のオルシーニが現れ、今宵開催されるネグローニ宮殿での夜会に誘う。宮廷での一件を話し、命の危険を感じているジェンナーロは断るが、熱心な友人の誘いに負けてしまう。仕方なく、夜明けには一緒にヴェネツィアに向けて旅立つことを約束し、仲間たちとネグローネ宮殿に向かう。ジェンナーロを見張っていた衛兵達は早速ルスティゲッロに報告し尾行しようとするが、ルスティゲッロはそれを制し「彼は自ら罠の中に飛び込んで行った」とほくそ笑む。
ネグローニ宮殿では ルクレツィアが設けた夜会が華やかに催されている。ヴェネツィアで受けた屈辱の復讐をしようとオルシーニら5人の若者を待ち受けていたルクレツィアは、彼らのワインに毒を入れてふるまう。何も知らずにワインを飲んだオルシーニは乾杯の歌「幸せであるための秘密をお教えしましょう」と歌うが、やがて異変に気が付く。ワインの毒がまわりはじめた5人の若者達は宮殿からの脱出を試みるが、扉には鍵がかけられ逃げることはできない。不気味な死の合唱が聞こえ、辺りは異様な空気に包まれる。そこに黒装束のルクレツィアが登場し「そうよ、私はボルジアの女」と歌い、若者の数と同じ5つの棺を見せてヴェネツィアでの復讐を宣言する。するとその時「棺は6つ必要です」と言う声が聞こえ、もうヴェネツィアに帰ったとばかり思っていた息子のジェンナーロが進み出る。恐怖に凍りついたルクレツィアは、他の者達を衛兵に連れ去らせ、ジェンナーロに残っている解毒剤を今すぐ飲むように懇願するが、彼は友人達を死なせて自分1人助かる気はないと拒否して、短剣で彼女を殺そうとする。思い余ったルクレツィアは「貴方もボルジア一族の人間であり、自分は実の母である」と打ち明けるが、時既に遅く、毒が回ったジェンナーロは「母上、わたしは遠く離れて生きてきました」と歌い息絶える。悲鳴を聞いて駆け付けたアルフォンソ公爵や家臣達を前に、ルクレツィアは「この若者は私の息子、私の希望、私の慰め」と歌い、ジェンナーロの亡骸に倒れこみ幕となる。