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♪ Der Rosenkavalier「ばらの騎士」

by hidepost, le 28 mar 2020

作曲:Richard Strauss(R.シュトラウス1864~1949)

内容:R. シュトラウスは、ウィーン世紀末文化を代表する作家・詩人・劇作家ホフマンスタール(1874~1929)の台本で前作のオペラ「エレクトラ」を作曲中に「次にはモーツァルト・オペラを作曲する」と彼への手紙に打ち明けていて、モーツァルトの「フィガロの結婚」に共通点を持つ作品。「ばらの騎士」とは、ホフマンスタールが創作したウィーンの貴族が婚約の儀式に銀のばらの花を届ける際に立てる架空の使者のことで、彼は「このオペラでは一見本物に見えるものが実は虚構なのです」と言っている。作者たちはこのオペラを«音楽のための喜劇»と名付け、過ぎゆく時への思いや、若い愛を優美かつ豊麗な音楽で描いた傑作。 全3幕 ドイツ語

あらすじ

第1幕

ウィーンにある元帥ヴェルデンベルク侯爵夫人の寝室の朝。

元帥夫人=通称マルシャリン(ソプラノ)と、愛人オクタヴィアン・ロフラーノ伯爵=通称カンカン(メゾソプラノ)が、ベッドで昨夜の愛の余韻に浸っている。17歳の若いオクタヴィアンは情熱的に愛を語るが、夫人はふと物思いにとらわれる。黒人の小姓が朝食を運び二人で食べ始める。オクタヴィアンが、元帥夫人の夫が長い間遠方に狩に出かけていることを喜んでいると、夫人が物音を聞きつけ、夫が帰宅したものと思い、オクタヴィアンに隠れるように命ずる。しかし、続きの間から聞こえる声で、元帥夫人は、それが夫ではなく従兄のオックス男爵(バス)であることが分かりほっとする。オクタヴィアンは、女装して小間使いの女中に変装し、どさくさに紛れて逃げようとするが、入ってきたオックス男爵と鉢合わせする。好色なオックス男爵は、女中が男性だとは気づかずに色目を使い、訪問の用件もそこそこに彼を口説き始める。オクタヴィアンが逃げられないため、仕方なく元帥夫人は、オクタヴィアンをマリアンデルという名の女中だとオックスに紹介し、オックスはやっと訪問した用件を話し始める。彼は、先日手紙で伝えたように、最近貴族になった富裕な商人ファニナルの一人娘と婚約したので、貴族の婚約の申し込みの慣例に従って銀のばらを届ける使者«ばらの騎士»を務めてくれる貴族を紹介して欲しいことと、財産分与の手続きのための公証人も紹介して欲しいという用件を言う。彼の手紙をろくに読んでいなかった元帥夫人は、適当に相槌を打ち、その間オックス男爵は、女中マリアンデル(オクタヴィアン)をまた口説きだすので、夫人は「花婿になろうとしているのに、女性を口説くのが職業のようね」と笑いをかみ殺す。悪戯心を起こした元帥夫人は、マリアンデルにオクタヴィアンの肖像画を持って来させ、«ばらの騎士»にこの従弟のロフラーノ伯爵を推薦すると言う。オックスは同意するが、その肖像画と目の前のマリアンデルが瓜二つであるのに驚き、曖昧にごまかす夫人の言葉から、マリアンデルがロフラーノ伯爵家の庶子だと思いこむ。そこへ、侯爵家の家令(テノール)を始め、面会客が次々と入ってきて、オクタヴィアンはようやく抜け出すことに成功する。夫人の調髪師が彼女の髪を整える間、孤児の母親や帽子売りなどが用件を述べる。情報屋で悪事を企むヴァルツァッキ(テノール)と連れの女アンニーナ(アルト)はゴシップを売りこもうとするが夫人は取り合わず、仕方なく彼らはオックス男爵に取り入り、彼はあとで自分の宿に来るよう言う。テノール歌手が夫人の前でオペラセリア風の空虚なアリアを歌っている間、オックス男爵は、夫人に紹介された公証人(バス)に結婚契約書を依頼するが、欲深い彼は、膨大な持参金を受け取る条項を無理やりに入れようとして公証人を怒鳴りつける。支度の整った元帥夫人が皆を退出させ、オックス男爵が従僕に銀のばらを持って来させると、夫人は受け取って「オクタヴィアン伯爵に頼んでおきます」と言う。一人になった元帥夫人は 物思いにふけり、自分がいずれは年を取らねばならぬと独白のアリア≪私もある一人の娘を思いだす≫を歌う。そこへ、自分の服に着替えたオクタヴィアンが颯爽と戻ってきて、悲しそうな元帥夫人を元気付けようとするが、夫人は遮って「全てのものは過ぎ去って行く。いずれ貴方も私の元を去るだろう」と言うので憤慨し「自分はいつまでも貴女と一緒だと」情熱的に語る。しかし、夫人は「私は真夜中に家中の時計を止めてみたけれど時は流れてゆくのよ」と、≪時は結局のところ、カンカン≫を歌い、彼に午後の再会を約束して去らせるが、彼を傷つけたことを悔い、部屋を去る時に別れのキスもしなかったと、召使に彼を呼びにやらせる。しかし、オクタヴィアンはすでに馬で駆け去っていた。夫人は、黒人の小姓を呼び、オックス男爵の銀のばらが入った箱を「オクタヴィアン伯爵に届けよ」と命じ、ふたたび一人物思いに沈む。

第2幕

オックス男爵の使者«ばらの騎士»が、銀のばらを届ける日となり、裕福な新興貴族ファニナル家の客間では、ファニナル(バリトン)、その一人娘で花嫁になるゾフィー(ソプラノ)、ゾフィーの侍女マリアンネ(ソプラノ)、ファニナル家の家令(テノール)が、その到着を待ってそわそわとしている。家令がファニナルに「しきたりでは、父君は«ばらの騎士»が到着する時には留守でなくてはならず、使者の到着より先に婚約者を迎えに行かねばならない」と告げ、ファニナルが出発する。外が騒がしくなり«ばらの騎士»のオクタヴィアン・ロフラーノ伯爵が、使者の行列に導かれて純白の衣装に身を包み到着する。彼は銀のばらをゾフィーに手渡して口上を述べ、ゾフィーも返礼を述べる。二重唱≪地上のものとは思えぬ天上のばら≫。儀式が終わると二人は打ち解け、ゾフィーは、貴族系図年鑑を調べてオクタヴィアンの年齢も洗礼名も渾名の「カンカン」も知っていると言い、オクタヴィアンは自分の心に沸き起こった、一目でゾフィーに恋をしてしまった不思議な感情を押さえられない。そこへ、オックス男爵がファニナルに伴われて入って来るが、彼の無作法な振る舞いにゾフィーは驚き、オクタヴィアンも側で憤慨する。オックス男爵は、現れた公証人と、結婚に伴う財産分与について話し合うために、ファニナルと別室に行く。オックスの従者たちが酒に酔ってファニナル家の女中たちを追いかけ、マリアンネも騒ぎに巻き込まれ行ってしまう。オクタヴィアンと二人だけとなったゾフィーは、「男爵とは結婚しないと」と、彼に力になって欲しいと頼み、ついに二人は互いに愛を打ち明け、愛の二重唱≪目に溢れんばかりの涙をたたえ≫を歌い抱擁する。そこへ、オックス男爵の手下となった情報屋のヴァルツァッキとアンニーナが現れ、大声を出してオックス男爵を呼ぶ。オックスが登場すると、彼と口をきくのも嫌なゾフィーに代わってオクタヴィアンが「令嬢は貴方と結婚する気はない」とゾフィーの気持ちを伝えるが、オックスは彼を小馬鹿にして取り合わない。ゾフィー自身も結婚しないと宣言するが、オックスは無視して彼女を連れだそうとするので、オクタヴィアンは剣に手を掛ける。ついにオックスも剣を抜いて応戦するが、あっさり肘を突かれて悲鳴を上げる。その騒ぎを聞きつけてファニナルが戻り、オクタヴィアンに退去を命じ、医者がオックスのけがの手当てをする。「オックス男爵とは結婚しない」と断言するゾフィーに、父ファニナルは「それなら修道院行きだ」と脅かし退場させる。オクタヴィアンは、ゾフィーにそっと「必ず使いを出します」と告げ、騒ぎを詫びて立ち去り、ファニナルはオックス男爵に詫びの酒を振舞う。酒の効き目でオックス男爵が元気を取り戻し、そこにアンニーナが、彼宛ての手紙を持ってくる。男爵がそれを読ませると、それは女中マリアンデルからの逢引きの誘いの手紙で、けちな男爵から駄賃をもらえぬアンニーナは怒って出ていく。手紙はオクタヴィアンの計略だが、そうとは知らない男爵は、すっかり有頂天になりワルツを歌い従者と共に退場する。

第3幕

怪しげな居酒屋の一室で、食事の準備が行われている。オクタヴィアンは、けちなオックス男爵に見切りをつけてオクタヴィアン側に寝返ったヴァルツァッキとアンニーナに、オックスをマリアンデルの名を騙った計略にかけるべく、色々な仕掛けを準備をさせている。やがて、マリアンデルに扮したオクタヴィアンが現れ、手はずが整ったことに満足して二人に財布を渡してその場を去る(この間はオーケストラ演奏によるパントマイムで進行する)。

いよいよ、オックス男爵とオクタヴィアンの扮するマリアンデルが登場。オックスは居酒屋の主人たちを去らせ、マリアンデルを口説き始めるが、彼女は純朴な田舎娘の芝居をしながらはぐらかす。やがて、色々な仕掛けが動き始め、オックスは驚き混乱し、マリアンデルも驚いて見せる。そこへアンニーナの扮した女が登場して、オックスを自分の夫だと告げ、連れて来た子どもたちが「パパ、パパ」と呼んでオックスにまとわり付くので、オックスは怒って大声で警察官を呼ぶ。警察官の質問にオックスは自分の身分を告げ、マリアンデルをファニナルの娘で自分の婚約者のゾフィーだと供述する。そこへオクタヴィアンがオックスの名で呼んだファニナルが登場するので、オックスの嘘がばれ、婿の本性を目の当たりにしたファニナルは、怒りと悔しさで外に待たせていたゾフィーを呼び寄せる。近所の人たちも集まり「スキャンダル」だと騒ぐので、気分が悪くなって倒れたファニナルは、ゾフィーに付き添われて別室に行く。オックスはこの場を切り抜けるために、マリアンデルに「お前と結婚しよう」と言うが、マリアンデルは警察に調書を取るように言って、別室で女の衣装を脱ぎ始める。その最中に、突如元帥夫人が到着する。 彼女がやってくることはオクタヴィアンの計画にはなかったので当惑するオクタヴィアン。ゾフィーが父親の伝言としてオックスに絶縁を告げ、元帥夫人も彼に「男爵の尊厳を失いたくなければここを去るように」と言う。オックスは、本来の姿に戻ったオクタヴィアンを見て、マリアンデルの正体を悟り、まだ性懲りもなくファニナル家と仲直りしようと目論むが、元帥夫人が「悪あがきはお止めなさい。総てはこの時を境に過ぎ去ってしまったものなの」と諭す。負けを認めたオックス男爵は、その場を去ろうとするが、居酒屋の主人が勘定書きをつきつけ、アンニーナに連れられた子どもたちが再びオックスを追いかけるので、彼は従者をつれて逃げ出す。居酒屋の主人やアンニーナたちが彼を追いかけて全員去り、舞台には元帥夫人とオクタヴィアン、それにゾフィーの三人だけが残る。元帥夫人とゾフィーの間に立って戸惑うオクタヴィアン、また、元帥夫人とオクタヴィアンの情愛細やかな間柄に気付いているゾフィー。元帥夫人は、先日予期した時が思いのほか早くやってきたことを悲しみつつ、若い二人を祝福する気持ちでオクタヴィアンをゾフィーの元に行かせる。彼は、戸惑いながらも元帥夫人に感謝して、ゾフィーに近づき、当惑する彼女に思いを告げる。ゾフィーが、事態を受け入れかねているので、元帥夫人は、彼女にもオクタヴィアンと一緒に家に帰るよう優しく諭す。そして、最初は拒否するゾフィーも、オクタヴィアンの求愛を受け入れる。複雑な心境を三人それぞれが歌う、美しい終幕の三重唱≪正しいやり方であの人を愛そうと心に決めたのだから≫。元帥夫人はファニナルに会いにそっと別室へ消える。 ゾフィーとオクタヴィアンは、ひしと抱き合って、幸福感に溢れた愛の二重唱≪夢だわ、本当ではあり得ない≫を歌う。元帥夫人と現れたファニナルは、二人の仲を認めて夫人とともに去る。ゾフィーとオクタヴィアンは、もう一度抱擁し、人々を追って部屋を出るが、その時ゾフィーがハンカチを落とす。二人が去った後の軽妙な音楽の中、元帥夫人の黒人の小姓が現れ、ゾフィーの落としたハンカチを見つけて駆け去り、幕が下りる。