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♪ Pikovaya Dama「スペードの女王」

by hidepost, le 8 fév 2020

作曲:Pyotr Il’yich Tchaikovsky(チャイコフスキー1840~1893)

内容:プーシキンの同名の短編小説をもとに、原作にはない「人間を支配する非情な運命の前には死しかない」という考えが、作曲者の弟Modestによる台本と作曲者自身によって付け加えられた。主役のヘルマン役は、全7場で全てで歌い、歌手としての力量と高い技術を要求される。 全3幕7場 ロシア語

あらすじ

第1幕
第1場 18世紀末エカテリーナ二世の治世のペテルブルクの広場。子守や乳母や家庭教師などが、連れてきた子どもたちを遊ばせている。近衛仕官のチェカリンスキー(テノール)とスリン(バス)が、最近同僚のヘルマンは酒ばかり飲んでいると話している。そこへ当のヘルマン(テノール)が、友人トムスキー伯爵(バリトン)と現れ、元気がないと心配する友人にヘルマンは「実は恋をしていて、その人は身分が違う上に名前も知らないのだ」と嘆く。そこへ最近婚約したエレツキー公爵(バリトン)がぶらりと現れ、皆は祝いの言葉を述べ、花嫁は誰かと尋ねる。そこへ伯爵夫人(メゾソプラノ)と孫娘リーザ(ソプラノ)がやって来るので、この人だとリーザを紹介する。ヘルマンは自分の恋する人は、エレツキー公爵の婚約者リーザと知って絶望し、リーザはヘルマンの燃える眼差しに何かを感じるが、伯爵夫人、エレツキー公爵と共に去っていく。それを見送りながら、トムスキー伯爵は「昔あの伯爵夫人はパリで »モスクワのヴィーナス »と呼ばれ、王妃のカルタ会で全てを失った時に、彼女に夢中だったサンジェルマン伯爵から 絶対に負けない3枚のカードの秘密を教えられて、負けを取り戻した。その後 彼女は夫とある青年にその秘密を教えたが、幽霊が現れ『秘密を知ろうとして近づく3人目の男から死を受ける』と予言されたのだ」と、彼女が≪スペードの女王≫と呼ばれる理由と、彼女が賭けに必ず勝つ3枚のカードの秘密を持っていることを話す。突然雷鳴が轟き、人々は去るが、一人残ったヘルマンはそのカードの秘密をつかんでリーザと結婚したいという執念に取り付かれ、「あの人を手に入れるか死ぬかだ」と叫ぶ。
第2場 リーザは、部屋で友人のポリーナ(コントラアルト)たちと歌っている。その騒ぎに家庭教師(メゾソプラノ)が来てたしなめ、皆は帰るが、最後になったポリーナは、婚約の日なのに悲しそうに見えると、リーザに言って帰ってゆく。一人になったリーザは涙を流し、自分が身分の高い立派な婚約者よりもヘルマンの暗い眼差しの虜になっている事に気がつく。その時へルマンがバルコニーに現れ、驚くリーザに「私は死ぬ覚悟だ。人を呼びたかったら呼びなさい」と近づき、熱烈な愛の告白をする。物音を聞いて伯爵夫人がやって来るが、彼女はヘルマンをかばって隠し、夫人が去ると、ついに彼女も彼への愛を告白する。

第2幕
第1場 仮面舞踏会で人々が楽しく踊り、チェカリンスキーやスリンは、最近ヘルマンは3枚のカードの秘密に取りつかれているようだと話す。皆が花火の合図でテラスへと出た所へ、リーザと婚約者エレツキー公爵が現れ、彼は悲しそうなリーザに切々と有名なアリア≪あなたを愛しています≫を歌い安心させようとする。へルマンが「今夜余興の芝居の後、広間で待っていてください」と書かれたリーザからの手紙を手に現れ、もし自分が3枚のカードの秘密を知る事ができれば、彼女と遠国に逃げられると考える。余興の牧歌劇が劇中劇として演じられ、リーザがそっとヘルマンに近づき、伯爵夫人の寝室の鍵を渡して「夫人の寝室の肖像画の下に自分の部屋に通じる扉があるので、今夜忍んで来て欲しい」と告げる。エカテリーナ女王の到着が告げられ、一同は万歳を叫び、ヘルマンは「リーザと3枚のカードの秘密も俺のものになる」と鍵を握り締める。

第2場 ヘルマンが伯爵夫人の寝室に忍び、リーザの部屋へ行こうと伯爵夫人の肖像画に近づくが「まずはカードの秘密を聞き出そう」と呟いてカーテンの陰に隠れる。夫人が着替えをしている間にリーザも戻り、小間使いのマーシャ(ソプラノ)に「部屋には彼が来ている。味方になって」と頼んで退かせ自分の部屋に入る。一人になって昔を思い出しながらオペラの一節を歌う伯爵夫人に、ヘルマンが近づき「3枚のカードの秘密を教えてください」と迫る。恐怖のあまり口がきけない夫人に ヘルマンはピストルを抜いて迫るので、彼女は恐怖のあまり死んでしまう。物音を聞いて入ってきたリーザは「貴方は私が目的ではなく、カードの秘密が目的だったのか」と、怒りと絶望にかられ彼に去るように言い、夫人の亡骸に取りすがる。

第3幕
第1場 ヘルマンが、兵舎の自室でリーザからの「貴方に殺意は無かったと今は信じている。今夜12時に運河で会いたい」と書かれている手紙を読み終えると、彼の耳には伯爵夫人の葬儀の時の不気味な合唱が聞こえてくる。風が唸って誰かが窓を叩く音が聞こえ、幻覚にとらわれたヘルマンは恐怖に駆られて戸口から逃げようとするが、その時夫人の亡霊が現れ「私の本意ではないが、リーザを救うために秘密を教える。3と7とエースだ」と言って消え去る。へルマンは狂った様に「3、7、エース」と繰り返す。

第2場 手紙の通りに運河に現れたリーザは、へルマンが犯罪を犯せる悪魔の様な男であるという思いと、そうではないという思いとが交錯して苦しみ立ち去ろうとする。そこへ、ヘルマンが現れリーザはヘルマンの胸に顔をうずめ、二人は愛の2重唱を歌う。「どこかへ逃げよう」と言うヘルマンに、彼女は「地の果て迄でも一緒に行く」と答えるが、彼は突然正気を失い「賭博場だ」と叫び、「婆さんがカードの秘密を教えてくれたが、ピストルを向けただけで死んでしまった」と激しく笑う。リーザは殺人者と共に罰を受けると嘆き、狂った彼を救おうと考えて逃げようと言うが、狂ったヘルマンは「3、7、エースだ」と叫んで リーザを突き放して賭博場に駈け出していく。絶望したリーザは運河に身を投げる。

第3場 賭博場ではチャカリンスキーやスーリンたちもカードをしている。一度も来たことのないエレツキー公爵の出現にいぶかるトムスキーに、彼は「婚約を解消したのだ。恋では不運だったが、カードでは幸運だ」と答える。へルマンが現れ、最初に3で、次には7で勝ち、祝杯を手にアリア「人生はばくちだ」と歌う。3回目の勝負ではエレツキーが相手となり、「エース」と叫ぶヘルマンに「スペードの女王で君の負け」と言い返す。ヘルマンの手にはスペードの女王のカードがあり、伯爵夫人の亡霊が現れる。へルマンは亡霊に向かって「何が欲しいのか、俺の命ならくれてやる」と叫び、自ら短剣で胸を刺す。瀕死のヘルマンはエレツキー公爵に許しを乞い、「リーザよ、本当に愛しているよ」と言って息絶える。人々は「この疲れ果てた魂に安らぎを」と静かに合唱して幕となる。