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♪ Tristan und Isolde「トリスタンとイゾルデ」

by hidepost, le 26 fév 2019

作曲:Richard Wagner(ワーグナー1813~1883)

内容:ケルトに起源を持つ古代トリスタン伝説を基盤に、中世のドイツ詩人G. van Strasburgが書いた叙事詩を土台に、ワーグナー自身が台本を書き作曲した。当時不倫の最中であったワーグナーが「あらゆる夢の中で最も麗しい夢の記念碑」と述べているように、この作品は究極的な愛の賛美である。全3幕 ドイツ語

あらすじ

第1幕 アイルランドの王女イゾルデ(ソプラノ)が、コーンウォール国のマルケ王のもとへ嫁ぐために、マルケ王の甥である勇士トリスタン(テノール)が舵を取る船に乗って海を渡っている。イゾルデの侍女ブランゲーネ(メゾソプラノ)は、「嵐でも起きて船が沈没してくれればよい」と動揺しているイゾルデを心配して、「悩みを打ち明けてください」と言うが、トリスタンに心深く囚われているイゾルデは、ただ天幕を上げるように命じる。イゾルデはブランゲーネにトリスタンを呼びに行かせるが、トリスタンは拒否し、彼の忠実な従僕クルヴェナール(バリトン)が「昔トリスタンは、イゾルデの婚約者モロルトを討ってその首をアイルランドに送ったのだ」と歌いだす。それをブランゲーネから聞いたイゾルデは「その戦いの時にトリスタンも傷を負い、傷に効く秘薬を持つ私の所へ流れて来て、私にタントリスと偽名を名乗った。私は自分の婚約者の仇である彼を殺す事が出来ず、傷を癒してやったのだ。今、私が年老いたマルケ王との愛のない結婚をする時に、そのトリスタンが護送役で迎えに来るとは」と、ブランゲーネに打ち明けて怒る。ブランゲーネが、イゾルデが母から受けた薬箱の中にある愛の秘薬の事をほのめかし、マルケ王との結婚は良い事だと慰めるが、イゾルデは薬箱を持ってこさせ「私に必要なのはこれだ」と死の毒酒を取り出す。クルヴェナールが現れて上陸の準備をするように言うが、イゾルデは「トリスタンが私に罪を謝りに来なければ上陸する事はできない」と言う。彼女はブランゲーネに死の毒酒の用意を命じ、ブランゲーネが躊躇(ためら)っていると、そこへトリスタンが現れる。彼は「婚約者の仇である私を殺せ」と言うが、イゾルデは「今は償いと和解の杯を交わしましょう」と杯を差し出す。彼はそれが死の毒酒である事を知りながら飲み干そうとし、イゾルデが残りの半分を飲む。すると、二人は呆然と立ちすくみ、互いに見つめ合い恍惚として抱擁する。船の上陸が近づき、水夫たちの「マルケ王万歳」の叫びが聞こえ、ブランゲーネは、イゾルデに王妃の外套を着せて連れ出そうとするが「私はまだ生きている。一体何を飲ませたの」と問うイゾルデに、愛の秘薬を飲ませた事を白状する。

第2幕 マルケ王が、部下でトリスタンの友人であるメロートの勧めで狩に出ている間、イゾルデはトリスタンとの逢引を待ち焦がれている。ブランゲーネは「メロートに注意して」と心配し、愛の秘薬を飲ませた罪を後悔するが、イゾルデはそれをさえぎって、自ら灯りを消しトリスタンへ合図を送る。トリスタンとイゾルデの愛の二重唱は、ブランゲーネの警告も耳に入らず、愛の究極、死への憧憬へと高まって行く。そこへメロート(テノール)の密告でマルケ王が現れ、現場を見たマルケ王は、妻イゾルデと、自分の甥で親友でもあるトリスタンに裏切られた悲しみを訴える。トリスタンはイゾルデに「私は夜の国に行く、貴方も一緒に来ますか」と静かに問い、頷く彼女に接吻する。それを見たメロートは、王の恥辱を成敗すると剣を抜き、トリスタンはわざと彼の剣に身を投げ出して傷を受ける。

第3幕 クルヴェナールが重傷のトリスタンを故郷に連れ帰り、その傷を治せるのはイゾルデの持つ秘薬だけだと彼女を呼び、待っている。牧童が笛を吹きながら現れ、トリスタンの容体を尋ね、クルヴェナールは「彼女の船が見えたら楽しい歌を吹いてくれ」と頼む。笛の音に意識を取り戻したトリスタンは、夢遊状態の中でイゾルデの船が近づく幻影を見たり、過去を語ったりして失神する。イゾルデの船が来た合図の楽しい牧笛が聞こえ、トリスタンは歓喜に震えて≪おお太陽よ≫と歌う。イゾルデは駆け寄って、よろめくトリスタンを抱きしめるが、彼は「イゾルデ」と一言呼んで息絶える。彼女も彼の亡骸の上で気を失う。再び牧笛が聞こえ、マルケ王の一行が到着し、クルヴェナールはメロートを刺すが、兵士たちに倒されてしまう。ブランゲーネから愛の秘薬を与えた事実を聞いて、二人を赦すために来たマルケ王は、トリスタンの死を嘆く。ブランゲーネの介抱で気がついたイゾルデも「穏やかに彼が微笑んで」と静かに歌い、永遠の愛の陶酔の中に息絶える。王は悲しみ、二人の冥福を祈り幕となる。