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♪ Dialogues des Carmélites「カルメル派修道女の対話」

by hidepost, le 27 sept 2017

作曲:Francis Poulenc(プーランク1899~1963)

内容:フランス革命の時、革命派によって特権階級だったキリスト教聖職者が弾圧された際に、革命派に従わずに信仰を貫いたために、ギロチン刑になったコンピエーニュのカルメラ会の16人の修道女の史実に基づいて書かれたドイツ人作家G. Von Le Fortの小説「断頭台下の最後の女」にヒントを得て、G. Bernanosが台本を書いた。重いテーマながら、プーランクの冴えた音楽は美しく、フランス語と音楽が見事に融合して、有名なラストのギロチンシーンが際立つ傑作。 3幕 フランス語

あらすじ

1幕 

1 時はフランス革命ジャコバン派恐怖政治の末期。フォルス侯爵(バリトン)は、 書斎でうたた寝している。そこへ息子の騎士フォルス(テノール)が、妹ブランシュの乗る馬車が群衆に取り囲まれて身動きできないという知らせを聞いて心配だと言いにくる。父は家の馬車は頑丈だし、馭者も信頼のおける男だから大丈夫だと安心させるが、兄は、妹ブランシュは生まれつき神経過敏で恐怖心が強いから心配だと言う。そこへブランシュ(ソプラノ)が帰ってくるので、侯爵は安堵するが、ブランシュはコンピエーニュの修道院へ入りカルメル派の修道女になる決意をしたのでお許しをと言いだす。父フォルス侯爵は、革命で世の中が恐ろしいからと言って逃避するのは良くないと言うが、彼女の決意は固い。

2場 数週間後、ブランシュは、カルメル派修道院を訪れ、修道院長のクロワシー夫人(アルト)に修道院へ入れて欲しいと頼む。修道院長は「修道院とは祈る所であり、世俗の危険から逃れるために入る所ではない」と言い、「神は貴女の力ではなく弱さを試されるのだと」諭す。しかしブランシュがかつて自分が望んでいたのと同じ修道名を望んでいること知り、因縁のようなものを感じ、ついには彼女を受け入れる。

3場 ブランシュは、若い修道女コンスタンス(ソプラノ)と食物を受け取りにきて、彼女があまりにも明るく快活なので「修道院長様が重病なのに、あなたは死が怖くないの?」と咎(とが)める。コンスタンスは「私は院長様の身代わりに死ぬことだってできるし、あなたと初めて会った時に私たちは若くして同じ日に死ぬ夢を見たわ」と答える。

4場 死期が迫った修道院長は、メール・マリー(メゾソプラノ)を呼び、一番若いブランシュを支えるようにと遺言し、入ってきたブランシュにも「いつまでも、今の様に純粋な気持ちでいなさい」と言う。鎮痛剤を与えられない院長は苦痛に耐えきれず錯乱し「祭壇は2つに割れた」と叫ぶが、再びブランシュが入って行くと、院長は正気を取り戻して、死の恐怖に襲われたことを神に許しを乞い死んでゆく。

2幕

1場 礼拝堂で、ブランシュとコンスタンスは、まだ蓋を閉めていない修道院長の棺の守番をしている。鐘が鳴り、コンスタンスは交代の修道女を呼びに行き、一人になったブランシュは怖くなって扉へ向かうが、出くわしたメール・マリーに棺から離れないよう咎められる。

幕前劇 ブランシュとコンスタンスは、お棺に入れる花の準備をしながら、新しい修道院長は誰だろうと噂をしている。コンスタンスは「院長様が臨終の時に錯乱されたのは本来のお姿ではなく、他の臆病な誰かの身代わりを引き受けたのでは」と思案し、「その臆病な誰かは勇気と落ち着きを持って死に望むのだろう」と結論するので、ブランシュはハッとする。

2場 新しく修道院長に選ばれたリドワンヌ夫人(ソプラノ)が、修道女たちに前院長と同じく祈ることが一番大事であると話し、皆で祈祷する。

幕前劇 ブランシュの兄フォルスが、ブランシュに面会を求めて修道院を訪れ、リドワンヌ修道院長はメール・マリーの立ち会いの下、それを許可する。

3場 兄フォルスは、修道院の中が安全ではなくなってきたと父も心配していると告げて、ブランシュを連れ出そうと説得するが、彼女は修道院に留まることを選ぶ。兄フォルスが去った後、自分の気持ちがわかってもらえないブランシュは悲しみ、メール・マリーに励まされる。

4場 礼拝堂司祭(テノール)が、政府によって宗教上の集会が禁じらたのでこれが最後のミサになると告げて礼拝し、僧服を脱いで修道院を出て行く。修道女たちは、革命の波が教会にまで押し寄せてきた恐怖を嘆き、メール・マリーは殉教を主張するが、リドワンヌ修道院長は殉教すべきではないと説く。群衆に追われて戻ってきた司祭が、再び裏口から逃げると、表の扉をたたく音。群衆と一緒に政府役人が入って来て、修道院を解散させ建物を接収すると宣告する。メール・ジャンヌ(アルト)が、リドワンヌ修道院長はパリに行くことになったと告げてキリストの陶器像をブランシュに渡すが、感動した彼女はそれを床に落として割ってしまい「私たちの小さな王は消え、犠牲のための小羊だけが残った」と泣く。

3幕

1場 破壊された礼拝堂で、一般服を着た司祭と修道女たちが、最後の秘密集会を開いている。メール・マリーが、殉教すべきか否かを無記名投票にかけ、反対票が1票でもあれば殉教しないことを提案して皆が投票する。結果は反対票が1票で、修道女たちはブランシュが投じたものと推測するが、意外なことに、反対票を投じたのはコンスタンス。しかし、コンスタンスは反対票を撤回すると宣言し、修道女たちは殉教することになる。この間に、怖くなったブランシュは修道院から逃げ出す。

幕前劇 パリから戻ったリドワンヌ修道院長以下、平服になった修道女たち。役人が、法王は革命軍の敵である故に法王に従う司祭には会ってはならぬと言い、市民が常に見張っていると警告する。

2場 修道院を逃げ出したブランシュは、革命派に占拠されたかつての自宅の旧フォルス侯爵邸で女中になっている。突然メール・マリーが現れ、殉教の時が来たので戻るように言うが、ブランシュは迷う。メール・マリーは「救いは天のみにある」と説得するが、ブランシュは父も処刑された今はどうしてよいのか解らないと言い、メール・マリーは明日の晩まで待つと言って去る。

3場 修道女たちは、コンシェルジュリ監獄で初めての夜を迎えている。リドワンヌ修道院長は、何者にも信仰を奪うことはできないと説き、感動的な詠唱を歌う。コンスタンスは、ブランシュはどこに行ったのかと尋ねるが誰も知らず、彼女がブランシュが戻って来る夢を見たと言うので皆は笑う。 役人が牢獄に入ってきて、修道女たちが革命を転覆する企てをしたとして、全員を死刑にすると宣告する。

幕前劇 昨夜までブランシュを待っていたメール・マリーが、バスティーユ近くの路上で司祭に会う。司祭から修道女たちが死刑になると聞いたメール・マリーは自分も殉教すべく刑場へ向かおうとするが、司祭から、神があなたの命を救うことを望んだのだと説かれる。

4場 群衆が、ギロチン台の置かれた革命広場での修道女の処刑を見に集まり騒いでいる。群衆の中に紛れて革命派の服を着た祭司は、前を通る修道女一人一人に、隠れて十字を切り祝福する。修道女たちは、「サルヴェ・レジーナ」を歌いながら処刑台へ向かい、一人ずつギロチンにかけられるが、その中にメール・マリーの姿はない。コンスタンスが最後の一人として処刑台に立った時、彼女は群衆の中にブランシュを見つけて微笑み、堂々と断頭台へと進む。ブランシュは驚く群衆をかき分けて進み出て、コンスタンスの途絶えた歌を引き継いで「来たり給え、創造主なる聖霊よ」を歌いながら後に続き、彼女の歌が消え、静かに幕となる。