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♪Tancredi「タンクレーディ」

by hidepost, le 7 juin 2017

作曲:Gioachino Rossini(ロッシーニ 1792~1868)

内容:ヴォルテールの悲劇「タンクレード」を基に、G. Rossiが台本を書き、21歳のロッシーニが作曲した、彼の最初の大成功作。初演されたヴェネチアのフェニーチェ劇場ではハッピーエンドで終わらせなければならず、その後それに疑問を持ったロッシーニが、フェラーラでの公演の際に、ヴォルテールの原作通りに最後の場を悲劇にして作曲し、今回はその両方を一晩づつ上演する。 2幕 イタリア語

オペラの背景

1005年頃のイタリアのシチリア島シラクサ王国が舞台。シチリアはサラセン王国(イスラム教国)とビザンツ帝国(キリスト教国、正教)の戦いの場となっていたが、都市国家シラクサは両者からの独立を求めていた。さらにシラクサには実力者アルジーリオと政敵オルバッツァーノとの内部抗争があり、オルバッツァーノ派が勝利を収めた時、アルジーリオは彼の妻と娘アメナイーデをビザンツ帝国の宮廷に送った。娘アメナイーデはシラクサからの亡命者タンクレーディとビザンツ宮廷で出会い、愛し合うようになっていた。前シチリア王の子であるタンクレーディ(ノルマン人)は、外国人という立場による疑惑からシラクサを追放されていた。また同時にアメナイーデは、サラセンの司令官ソラミールからも求愛され、彼女を得ることと引き換えに和平を提案されていた。そんな中、アメナイーデの父アルジーリオは、窮地に陥入っていたシラクサの国王となったのである。

あらすじ

第1幕

人々が、シラクサ王の栄光を称える合唱をし、シラクサ国王アルジーリオ(テノール)は、続いているサラセン国との戦いに備えるために、政敵オルバッツァーノ(バス)と手を結ぶことにし、その和解の証しにオルバッツァーノと娘アメナイーデを結婚させることを宣言する。
父王アルジーリオに、オルバッツァーノと今日結婚式を挙げよと命じられたアメナイーデ(ソプラノ)は、結婚を一日延ばすように嘆願する。そこへ彼女の友人イザウラ(メゾソプラノ)が現れ、アメナイーデが愛するタンクレーディに、帰国してシラクサを救って欲しいと書いた手紙を、亡命中の彼に届けるように手配したと報告する。それを知らずに秘かにシラクサに帰国したタンクレーディ(メゾソプラノ)。友人ロッジェーロ(メゾソプラノ)が、アメナイーデに 彼の帰国を知らせようとするが、タンクレーディはそれを止める。そこへ偶然来たアメナイーデが、タンクレーディに、何も説明せずに彼に身の危険が迫っているので逃げることを強く勧めて去る。折しもタンクレーディは、広場で当のアメナイーデとオルバッツァーノの結婚を祝う合唱を聞き、彼女が自分を裏切ったと思い込み、こらえられず身分を隠して、国王アルジーリオにサラセンと戦う義勇兵に志願を申し出る。それがタンクレーディだと分かっているアメナイーデは苦悶し、父王に結婚式を取りやめるよう懇願する。オルバッツァーノは怒り、彼女のタンクレーディに宛てた手紙をサラセン軍司令官ソラミール宛てたものだと告発する。それには宛名が書いてないので彼女は弁解することができず、人々はアメナイーデがサラセン軍に救いを求めたものと誤解し、彼女は捕らわれてしまう。一方、タンクレーディも彼女がサラセン軍司令官ソラミールを愛していると誤解する。

第2幕

国王アルジーリオは、娘への愛と国王としての義務に苦悩しながら、ついに娘の死刑に署名する。投獄されたアメナイーデは運命を嘆き、タンクレーディがいつの日か自分の無実を知ってくれるように祈る。そこに国王である父とオルバッツァーノが現れ、誰も彼女を護ろうとする者はいないと言うが、そこに仮面をつけたタンクレーディが登場し、身分を明かさずにオルバッツァーノに決闘を申し込む。タンクレーディはオルバッツァーノと決闘し、アメナイーデの無罪を勝ち取るが、彼はまだ彼女の自分への愛を信じることができず、サラセンとの戦いに行くために去る。

ヴェネチア版終幕(ハッピーエンド)

アメナイーデを忘れられないタンクレーディが一人苦しんでいると、サラセンの兵士たちの合唱が聞こえてくる。アメナイーデとアルジーリオがやって来て、タンクレーディの誤解を必死に解こうとするが彼は心を開かない。アメナイーデが足元に身を投げ出すのを見てようやくタンクレーディも心動かされるが、サラセン軍が間近に迫り、彼は騎士たちを率いて戦地へと向かう。やがて勝利して戻ってきた彼は、打ち倒した敵将ソラミールの口からアメナイーデの手紙は実はタンクレーディに宛てられたものだったと告げられており、アメナイーデの手を取り、一同喜びのうちに幕となる。

フェラーラ版終幕(悲劇)

騎士たちがタンクレーディを指揮官に求め、その姿を探している。アメナイーデとアルジーリオは彼を見つけるが、タンクレーディは心が乱されることを望まず、彼女を拒絶して戦場へと行き、戦闘が始まる。やがて敵に刺されて瀕死の重傷を負ったタンクレーディが戻って来る。国王アルジーリオから「娘は貴方を愛していた。手紙はタンクレーディ宛だったことが判明した」と告げられた彼は、自分の悲願が成就したことを知り、末期の苦しみのなか、アメナイーデに看取られて息絶え、幕となる。