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♪Hamlet「ハムレット(アムレ)」

by hidepost, le 29 sept 2013

作曲:Ambroise Thomas(トマ 1811~1896)

内容:有名なシェークスピアの「ハムレット」(仏語なので「アムレ」)を、J. BarbierとM. Carréが手を加えて台本を書き、フランスオペラ作曲家グノーのライバルで、オペラ「ミニョン」で知られる作曲家トマの作品。ソプラノ歌手のオフェリーが歌う「狂乱の唄」は特に有名で、劇的で迫力のある名作。

5幕 フランス語

あらすじ

第1幕 第1場

宮殿では、2カ月前に逝去した前王の妃ジェルトリュード(メゾソプラノ)が、前王の弟クロード(バス)と再婚し、クロードが新王となり、ジェルトリュードが再び王妃となることを祝っている。王妃ジェルトリュードは、その戴冠式に、息子のアムレ王子が姿を見せないので不安になっている。戴冠式の終わった後、一人現れたアムレ王子(バリトン)は、父王の死後すぐに母が叔父と再婚することに悩んでいて、恋人オフェリー(ソプラノ)に、優しく慰められる。オフェリーは大臣ポロニュースの娘で、アムレは、彼女の純粋な愛に唯一の心の救いを見出して、彼女に永遠の愛を誓い、二人は愛の二重唱を歌う。そこへオフェリーの兄ラエルト(テノール)が現れ、王の命令でノルウェーに行くことになったが、妹オフェリーをよろしく頼むと、アムレにオフェリーを託す。祝宴が始まり人々が集まって来て、オフェリーはアムレを祝宴に誘うが、彼がそれを断るので、彼女は兄ラエルトと祝宴に向かう。祝宴では、アムレの親友で廷臣のマルセル(テノール)とオラース(バス)が、昨夜亡くなった先代の王の亡霊を見たことを王子アムレに告げなくてはと、アムレを探していている。

第2場

城外でマルセルとオラースが、今夜も前王の亡霊が現れるのを待っているところに、アムレが来て、二人から、昨夜前王の亡霊を見たと告げられ激しく動揺する。二人は、亡霊は真夜中に3度現れて、鶏が鳴くと姿を消したが、言葉は何も言われなかったと話す。

父上の亡霊は必ず戻ってくると待つアムレ。真夜中の鐘が鳴ると、亡霊(バス)が姿を現すので「父上はなぜここへ戻って来たのですか?」とアムレは尋ね、亡霊は、マルセルとオラースを遠ざけるように示して「弟クロードが汝の母と姦通(かんつう)し、その後私を毒殺したのだ。王を殺せ。ただし汝の母には危害を加えるな」と告げて消えて行く。アムレは、必ず復讐を果たすと亡霊に誓う。

第2幕 第1場

オフェリーが、最近アムレが彼女のことを忘れたかのように振舞うので不安に悩んでいる。そこへ、アムレの母ジェルトリュード王妃が現れ、どうしたのかと尋ねるので、オフェリーは「アムレがもはや自分を愛していないので、この王宮から出て行きたい」と言う。王妃は、実は自分も最近王子の様子がおかしいと気付いているが、彼を正気に戻せるのはオフェリーの愛だけなので、王宮に留まるようにと言い、オフェリーは王妃の言葉に従うことを約束して去る。そこへ王クロードが現れ、不可解な行動をとるアムレを怪しみ、「もしや事件の真相を知ったのでは?」と王妃に問う。そこへ当のアムレが現れて、王に王宮で芝居を上演してよいかと許可を求め、王はそれを許して王妃とともに去る。マルセルたちが、役者たち一座を連れて来て、アムレは彼らに酒を振舞って有名なアリア「酒は悲しみを忘れさす」を歌う。

第2場

王、王妃をはじめ宮廷の人々が集まって、芝居が始まる。アムレは「この劇は老王とその妻の話だ」と説明するが、芝居は老王を弟が毒殺する場面を演じて、動揺した王は芝居の中止を命じる。アムレは、狂気を装って王の前に立ちはだかり「汝こそ父王を殺害した罪人である」と叫び、王の王冠を叩き飛ばす。マルセルとオラースがアムレを取り押さえ、王はアムレを狂人と決め付けて退場し、人々が騒然とする中、アムレは狂ったように笑う。

第3幕

アムレは、王妃の部屋で母の二人の夫の肖像画を見ながら、いまだに復讐できぬことを悩み「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」と自分に問う。そこに王が来る気配なので、アムレは隠れ、王は先王の肖像画の前で祈って許しを請う。王は大臣ポロニュース(バス)を呼び「前王の亡霊を見た」と打ち明け、大臣は「そのような動揺が人々に疑いをもたらすので気をつけるように」と忠言し、連れ立って去る。それを聞いたアムレは、愛するオフェリーの父である大臣ポロニュースが、王と共犯であったことを知って愕然となる。王妃がオフェリーと現れて、アムレにオフェリーとの結婚式を早く挙げるようにというが、彼女の父の罪への加担を知ったアムレは、オフェリーに「まだ愛されていると思っているのか、尼寺へ行け」と、指輪を投げ捨てる。涙を押さえて逃げるように出て行くオフェリー。残った王妃が「そなたは本当に狂ったのか?」と聞くと、アムレは「犯罪の全てを知っているのだ。賢明な前王を、残酷非道な今の王と取り替えるとは」と嘆くので、王妃もついに罪を認め、アムレに許しを請う。突然、アムレだけに見える前王の亡霊が現れ「母親の命を奪ってはならぬ」と命じるので、アムレは母に「後悔なされたならば祈りなさい」と言って立ち去る。

第4幕

城外の野原では、農夫たちが歌い踊っている。アムレの愛を失ったオフェリーは狂気に陥って、自分はアムレの妻だと思い込んだまま、狂乱のアリア“私の花を皆さんで分けてください”を歌い、川に落ちて死んでゆく。

第5幕

二人の墓掘り男が「どんな身分の人間でも1度は俺たちの世話になる」と陽気に歌っている墓場に、王の追っ手から逃れてさまようアムレが現れる。アムレはまだオフェリーの自殺を知らず、彼女を狂わせてしまったことの自責の念にかられ、許しを請う。そこへオフェリーの兄ラエルトが帰国して現れ、妹の仇だと決闘を申し込む。その時、王や王妃を伴った葬送の行列が来るので、アムレは「誰の葬式か?」と問い、ラエルトは「妹の死を知らなかったのか」と決闘を中止する。アムレはオフェリーの死体に取りすがって、自分も自殺しようとするが、マルセルらに止められる。その時、前王の亡霊が現れて「復讐の時は今だ」と告げ、アムレは王を剣で刺し殺す。亡霊は「王妃は尼寺へ。アムレは新王となれ」と告げて消える。アムレは「我が王である」と宣言して、人々はアムレ新王万歳と合唱して幕となる。