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♪ Norma「ノルマ」

by hidepost, le 30 août 2025

作曲:Vincenzo Bellini(ベッリーニ1801~1835)

内容:1831年30歳のベリーニが、成功したオペラ「夢遊病の女」と同じ台本作家ロマーニの台本で作曲した、彼の10のオペラの8番目の作品。 当時の著名な脚本家であったロマーニは、パリ・オデオン座で公開されたLouis-Alexandre Soumet作の同名の舞台劇を観てオペラにすることを考え、手を加えて台本を書いた。主役のノルマ役は、民衆を導く指導者、小さな子どもの行く末を案じる母、そして一人の男を想う女性としての引き裂かれた感情の表現力が要求され、ソプラノ歌手にとって最も難度の高い役の1つ。平和を祈るアリア「清らかな女神(Casta Diva)」は特に有名。
現代人にも通ずる愛憎の三角関係が、美しく凛としたメロディで描かれ、それはまさにベッリーニが「オペラとは我々を歌唱によって泣かせ、震えさせ、死なせるものである」と語るように、ベルカント(美しい声と歌い方)・オペラの醍醐味といえる傑作。

あらすじ

第1幕

第1場
舞台は、ガリア地方(現フランス)のドルイド教徒の神聖な森。前奏曲の後、ドルイド教徒の長でノルマの父であるオロヴェーゾ(バス)が、人々に占領国ローマ帝国からの解放を励まして人々と去る。物陰から現れたローマ帝国ガリア総監ポリオーネ(テノール)が、同行する友人フラヴィオ(テノール)に「ノルマへの愛はもはや醒め、今は若いアダルジーザを愛していて、彼女を連れてローマに帰りたい」と告げ、「もしノルマがそれを知れば復讐があるだろう」と恐れる。月の出を待つドルイド教徒たちが現れて祈り、巫女の長ノルマ(ソプラノ)が、有名なアリア「清らかな女神(Casta Diva)」を歌い、月の女神に静かに祈る。人々はローマへの怒りに燃えているが、ノルマは蜂起を許さない。彼女は、実は自らが掟に背きローマ総督ポリオーネを愛し、密かに2人の息子までもうけた苦しい胸のうちを独白し、彼の愛が自分に戻ることを密かに祈る。一同が去った後、これもまたローマ人に対する背徳の愛に悩む、若き巫女アダルジーザ(メゾソプラノ)が独り残る。そこに当のポリオーネが現れ、アダルジーザに「一緒にローマへ逃げよう」と、情熱的に説得する。初めは拒絶していたアダルジーザも、遂には従うことを約束する。

第2場
ノルマは、友人クロティルデ(メゾソプラノ)の助けのもと、住居で密かに2人の子どもを育てている。そこへアダルジーザがやって来るので、ノルマは、慌てて子どもたちを隠す。アダルジーザは「自分は巫女には禁じられた恋愛をしてしまった」と悩みを告白する。お互いに同じ男を愛しているとは知らないノルマは、その苦悩が全く自分と同じであることに感動し、彼女を優しく慰めて赦す。ノルマが「それでその男は誰?」と尋ねた時、偶然に当のポリオーネが現れ、アダルジーザは彼を指差し、2人の女性は初めて状況を理解する。ノルマは「不実者、この娘までも毒牙にかけたのか」と、彼に激怒して「アダルジーザには罪はなく、全てはお前の不実のせい」と激しく彼を非難する。3人による恋の修羅場の三重唱で1幕の幕が下りる。

第2幕

第1場
ノルマは2人の息子と心中しようと試みるが、子どもの可愛い寝顔を見るとできず、泣き崩れる。ノルマはクロティルデにアダルジーザを呼びに行かせ、住居に現れた彼女に、「私は自殺するので、2人の子どもを育てて欲しい」と頼む。アダルジーザは「自分はポリオーネと別れる決意を固めた、その提案を彼に伝えに行く」と言い、「子どもたちの素晴らしい母親として生きて欲しい」とノルマを説得する。ノルマとアダルジーザは互いの友情を確認し、有名な美しい二重唱が歌われる。

第2場
クロティルデが戻ってきて、ポリオーネがアダルジーザの提案を拒否したと聞いたノルマは、怒りのあまり、祭壇の銅鑼を3度打ち鳴らし、ドルイド教徒たちに戦争の開始を合図する。そこへポリオーネが、アダルジーザを連れ去ろうと神殿に闖入して捕われたとの報せが入り、群集が彼を引き立ててくる。ノルマの父、ドルイド教の長オロヴェーゾが、短剣で彼を殺そうとするが、娘ノルマは「自分がする」とその短剣を受け取る。ノルマは「この男を殺す前に、尋問して共犯の巫女の名を明らかにする」と述べ、人々を一旦立ち退かせる。ポリオーネと2人きりになったノルマは「アダルジーザを忘れるという約束と引換えに、お前の命だけは助けよう。さもなくば彼女と一緒に生贄にする」と言うが、ポリオーネは取り合わず、アダルジーザの助命を求める。ついに決心をしたノルマは、再び人々を招集し「この神殿の巫女の1人が掟に背いたので生贄にする。火刑台の準備を。」と告げる。驚く人々に、ノルマは「生贄にされるべき裏切り者は私だ」と宣言し、アリア≪裏切られた心≫で、今迄の経緯を話す。最後に彼女は、父オロヴェーゾに「過ちで出来た2人の子どもの命は助けて欲しい」と泣いて懇願し、彼はためらうが受け入れる。彼女の気高さに感動したポリオーネは、「貴女は素晴らしい女性なのに、自分はそれを知るのが遅すぎた」と許しを請い、ノルマの後を追って火刑台に身を投じて幕となる。