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私は北海道出身なのですが、北海道の冬
は厳しく、スポーツというと室内競技が中心に
なりがちです。私も中学までは卓球の選手
で、大会にも出てがんばっていました。それ
が15歳になる頃、兄や従兄の影響で偶然空
手を始めたんです。もちろん、将来こんな遠
い土地でその空手がライフワークになると
は、その時は夢にも思いませんでしたね。
当時、地元ではまだ大学進学者自体もそ
れほど多くなかったのですが、幸運にも空手
特待生として東京の大学に奨学金を得て進
むことができました。それからは空手一色で
す。練習にも試合にも、大学の名を背負っ
て、がむしゃらにがんばりました。学生時代
の思い出？ 「空手とアルバイト」ですね(笑)。
大学卒業後すぐ、縁があって日本空手協
会の派遣でベルギーにやって来ました。当
時ベルギーでは、空手は柔道連盟の下部組
織で、120ほどの道場がありました。言葉も何
もわからないまま、着いて3日目には電車の
乗り方だけ教わって道場へ指導に出かけま
したね。それから40年たった今では、ベル
ギーでの指導の合間に、北欧からイスラエル
まで、年間35週末ほど、ヨーロッパを中心に
各国へ指導に出かけています。
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空手道は中国・福建省が起源で、19世紀
に沖縄で形作られた後、大正時代以降に
日本本土で発展、普及した武道です。そこ
には日本文化の根本的思想である武士道
精神、禅仏教などの教えが濃厚に取り入れ
られていて、自分を鍛えることを学ぶ修行ス
ポーツです。それが第二次世界大戦後に
世界に広まったわけですが、残念ながら今
も、日本人も含め、試合競技の結果や、瓦
割りのような見た目の奇抜さを追い求めるス
ポーツという誤った捉え方をされている場合が
多くあります。
私たち空手家の求めている武道は「自己との
戦い」が目的であって、勝敗や見世物が目的
ではないんです。もちろん、血気盛んな若い
時期には果敢に試合に挑むことは大切です。
そこで緊張や恐怖心を体験し、自分の体力や
実力を客観的に評価して、謙虚に反省し、顕示
欲を克服することは修行の一部ですから。
私は、空手道というのは人生でぶつかる
様々な問題を乗り切る力、生存する知恵、体
力を日々の稽古の中で捜し求めていく、生涯
学習だと思っています。だから、年齢制限は
ありません。5歳頃からの幼年期には礼法、立
ち居振舞い、エチケットなどを学び、少年・青
年期には試合で自分を試し鍛錬します。熟年
から老年期にかけては自律、自助、尊厳ある
老後を目指して稽古を続けていくんです。
同じ理由で、日本人も、現地や諸外国の
空手家も、私の目には差異はありません。言
葉が通じなくても空手の道を伝えることはで
きます。過酷な現代社会でたくましく生き抜く
ための肉体的、精神的な持久力、自己管理
能力を養っていく必要があるのは、人間であ
れば誰しも同じことですよね。
今年度から、フラマン語共同体スポーツ振
興組織Blosoが空手の教えを教育現場に役
立てていこうと、VUB(蘭語系ブリュッセル自
由大学)の教育学部で体育の授業に空手クラ
スを設け、私がその指導に当たることになりま
した。教員を目指す若者たちとの稽古でどん
な手ごたえがあるか、楽しみにしているところ
です。
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