プチポワ独占インタビュー
ベルギーで活躍する日本人

ブラッセル日本人学校補習校とは？
ブラッセル日本人学校補習校は、1974年にベルギー日本人会が母体となってルイーズ通り近くのアパートを借りて始まりました。全日制が79年に発足した後も、インター校や現地校、遠方から通う子ども達のために存続したんです。どんどん生徒数が増え、各方面の努力により26年ぶりに政府からの派遣教員が実現し、それが私という訳です。
世界には185の補習校があります。全日制は80数校。補習校の多くが100人未満の学校で、小中併せて10人、20人なんていう学校もざら。100人以上の補習校はヨーロッパ中でも5校しかない。殆どの学校が自前の校舎も持たず、週末だけ現地校の校舎などを借りて授業をしているなか、日本人会の強力なバックアップで自前の校舎で学べるブラッセル日本人学校補習校は本当に恵まれていると思います。

補習校の校長として考えていることは？
現在小中学生約170人の在籍です。おおまかに駐在家族5割、永住日本人1割、国際結婚家族4割。子ども達の日本語力や学習目的が様々な中で教える難しさもあるけれど、補習校は｢同年齢の日本の子どもたちが同じ日本の教科書を使って共に学ぶところ｣であることが大事だと。異なるバックグラウンドであっても集団の中での学習を通して日本的な文化・価値観に触れて「共通項」をもつこと、それが日本人としてのアイデンティティを育てることに繋がると思います。今年、そんな補習校ならではの親の悩みを話し合う「子育てなんでもトーク」を妻の協力で始めました。
子ども達は2つの学校に通ってがんばっています。講師の方もその何倍ものエネルギーで一生懸命にやってくれています。そんな熱意のある方を随時募集しています。

小中学生の頃はどんな子どもでしたか？
熊野の田舎に住んでいたので、田んぼで遊んだり、椎の実を採ったり。でも中学に入って英語を習うと海外志向がでてきた。今みたいに情報もないので海外文通というのを始めたんです。その頃のエピソードを一つ。72 年に札幌オリンピックがあって、女子フィギュアでジャネット・リンが尻餅をついて銅メダルになったものの、妖精の様な笑顔で日本中を魅了したことがありました。でも私はなぜか、1位だったベアトリックス・シューバに手紙を書いたんです。宛先にオーストリアオリンピック委員会とか書いて。そしたらね、返事が来たんです。もう飛び上がるほど嬉しくてね。海外志向はそれからずっと続いています。

休日・余暇の過ごし方は？
Woluwe公園のプロムナードをジョギングします。休日でも学校のことを考えてしまいますが、走っていたら堂々巡りの考えが吹っ切れて良いアイデアが浮かんできたり。本当は山登りのトレーニングで走っていたんですが、苦しいけれど素の自分に出会えるマラソン、特にウルトラマラソンの魅力を知りました。ベルギーのボーネムという町で24時間かけて100キロを走る「死の行進」というウルトラマラソンがあるんですが、すごく楽しい。途中の給水所でビールや食べ物が出るんですね。9000人の参加者の半分くらいはそこでパーティーを始めちゃって(笑)。小さな町でもボランティアがたくさん来てね、走っていると感謝の気持ちが自然と出てくる。この上なく人間を信じたくなるんです。熊野でも「奥熊野100キロマラソン」という大会を地元の仲間と作っています。帰ったらまたやりますよ。

おすすめのレストラン「めしやお郁」とは？
自宅です。妻、郁子の料理はとてもおいしいんですよ。

最後に伝えたいことは？
子ども達には、例えば山のてっぺんに1人でテントをかついで一夜を過ごすとかね、言い訳の効かない状況の中で自分の弱さを知っていざという時に逃げない本当の強さを身につけて欲しいですね。バーチャルでなく、本物を見て欲しい。
今までは子どもが自分で自分の道を選択していける力をつけていくようにと考えてきました。でも最近「子どもは未来からの借り物」、アメリカインディアンの言葉ですが、そう思います。将来、子ども自身が親になって子育てをし未来の社会を作っていく資質を育てたいと。未来への種まきです。