2月2日は、カトリック教徒にとって、聖燭節と呼ばれる聖母マリアの清めの祝日。イエス・キリストの生後40日目に聖母マリアが「お宮参り」をした日です。といっても、宗教的行事にはよくあるように、この聖燭節も古代信仰やユダヤ教・キリスト教の風習が混ざってできたものです。

　クレープを食べる日
　この日は休日ではなく、ミサやローソク行列をすることもありますが、一般家庭の行事としては、教会に行く人は少なく、宗教的な意味は薄れ、クレープを焼いて食べるという習慣だけが残っています。これも、家庭によって様々で、小さい子供がいる家庭や学校では、ローソク立てを作ったり、クレープを一緒に焼いて楽しみますが、何もしない家庭も多いようです。日本で節分など季節の行事をきちんとする家庭がどれほどあるか、という状況と同じかもしれません。

　ローマ時代の風習
　Chandeleurはラテン語のcandela（ローソク）からきていることばです。つまり、ローソクの祭りです。
　ローマ時代、1年に一度、一晩中ローソクとたいまつに火を灯し、死者と冥界の神・プルトンPlutonを祀っていた、あるいは牧神パンPanの崇拝者たちが、Panを祀るためにローマ市内をたいまつを持って走った、という風習がありました。このPanの祭りは、ローマで何百年と続いていたルペルカーリアLupercaliaという祭り（豊穣の神ルペルクスLupercusを祀る）にかわって5世紀頃に始められたものです。

　ユダヤ教、キリスト教の儀式
　モーゼの律法によると、男子を産んだ場合40日間、女子の場合は80日間、母親は汚れているとされており、汚れを清め、幼児を神に捧げるために（実際は小羊やハトをいけにえにして捧げました）神殿を訪れなければなりませんでした。イエス・キリストは男子なので生後40日たったところで、このヘブライの儀式のために聖母マリアは神殿を訪れました。この時予言者シメオンSimeonがイエスと対面し「私は遂に救いを見た」と賛歌を歌いました。これが12月25日から数えて40日後、つまり2月2日のことです。
　472年、教皇Gelaseが「イスラエルの光」イエスを祝してローソク行列を行いました。それで聖燭祭とも呼ばれるようになったのですが、この日にクレープを焼いて供されたといういわれもあります。

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　こうして古代からの風習、宗教の儀式が入り交じって、今日のChandeleurとなってきました。今ではもっぱらクレープを食べることに関心が寄せられているようです。ある言い伝えでは、右手に金貨を握り左手でフライパンを持ってクレープをうまく片手でひっくり返すことができたら、その年はお金に困らないとか。

　ちなみにクレープはフランス・ブルターニュ地方の郷土料理です。土地の痩せたこの地域で栽培することのできたソバをもとに、クレープが生まれました。日本のお好み焼きのようなもので、卵、ハム、チーズなどをのせます。冷蔵庫に何もない、という時に、さっとできる便利な軽食でもあります。ソバ粉で作るものを特に「ガレット」とよび、小麦粉で作りデザートとして食べるものをクレープと区別して呼ばれています。

もう一つの歳時記“聖バレンタインデー” 　豊穣祭Lupercaliaは2月15日に行われていました。その前日、つまり14日の夕方、未婚女性の名前を書いた紙が入れ物に入れられ、翌日男性がその紙を引き、紙に書いてある名前の女性と1年間付合い、また翌年同じようにくじ引きをするという行事がありました。5世紀の終わり頃、若者の風紀の乱れを憂えた当時の教皇がこの風習を禁じ、女性の名前の代わりに聖人の名を書いた紙を引かせ、引いた名前の聖人の通りの生活を1年間ならうようにさせたのでした。そして、その約200年前の2月14日に殉教した聖バレンタインをこの行事の守護聖人にしたのです。既に聖バレンタインは恋人の守護神とされていましたが、これが現在の聖バレンタインデーのもとになりました。