美しい並木と、各国の大使館、ブリュッセル・自由大学（ＵＬＢ=Université Libre de Bruxelles）のキャンパスがあることで知られるフランクリン・ルーズベルト通り。道路わきの木立の中で目を引く白い銅像が、アーネスト・ソルベイです。ベルギーが誇る著名な化学者で、また実業家でもありました。

　化学の分野での一番の功績は、今でも「ソルベイ法」として知られる、水酸化ナトリウム（苛性ソーダ）の製造法 を編み出したことです。18世紀、ヨーロッパではペストや天然痘などの伝染病が多発していました。公衆衛生の徹底のためには、まず清潔にすること。そのためには石けんが必要でした。石けんの大量生産を急務としたフランスは1775年、学士院が賞金を出して海水から苛性ソーダを製造する方法を募集します。1790年、フランスのニコラス・ルブランが、ルブラン法を発明して賞金を獲得しますが、ソルベイは1861年、ルブラン法よりも公害の少ない、アンモニアと炭酸ガスを使った製造法（ソルベイ法）を編み出します。23歳の時でした。

　2年後の1863年にはベルギー国内に工場を設立、1882年には、アメリカで初のソルベイ法の工場が作られます。ソルベイ法は、安価で品質の良い石けんやガラスの製造などに多大な貢献をしました。
ソルベイは多才な人で、化学だけでなく、生理学、社会科学、哲学、社会学にも造詣が深かったといいます。晩年には議員、閣僚にも名を連ねました。
実業家としての才もあったソルベイが考えていたのは、従来の経済学でなく、時代にあった“ビジネス”を学ぶ場を作ることでした。

　1903年、ソルベイは、ブリュッセル・自由大学の中に、経済専門コース（Ecole de Commerce Solvay）を作ります。これが、現在の「Solvay Business School」の前身です。

　1914年、76歳の時、ソルベイは、救援物資を供給する委員会を設立し、大戦中のベルギーの人々の食料調達に貢献しました。常に、大衆と、社会、政治との関わりを考え続けていた人でした。

　現在、ソルベイのビジネスコースには、約2000人の生徒がおり、30に及ぶ専門コースで学んでいます。