 
~2 杯目~
fascine par le diable
gefascineerd door de duivel
「悪魔」に魅せられて
「黄金色のビール」・・・。
多くのビール好きを魅了してやまない「デュヴェル(DUVEL)」。一見ピルスナータイプか? と思わせる色をしていますが、実はゴールデンエールタイプ。瓶内発酵も含む長い熟成期間を経て生み出されるこのビールは、アルコール度数が8.5%となかなかのもの。
これを飲むときはどうかお気を付けくださいね。なんでも、悪魔のビールだそうですから。
ブリュッセルとアントワープのちょうど中間に位置する
ピュース‐ブレーンドンク (Puurs - Breendonk)にある醸造 所 、「 モ ー ル ト ハ ッ ト(Moortgat)」で造られている「デュヴェル」。そのネーミン グには、ちょっと面白いエピソードがあるのです。
1871 年、初代が小さな醸造所を創設。その息子たちは第 1
次大戦後、英国のエールタイプのビール造りに取り組んでいました。1923 年、出来上がったばかりのビールを味見した友人の靴屋が、その力強い風味に驚き、「うむむ、まさに悪魔じゃ・・・」とのたまったとか。「デュヴェル(DUVEL)」とは、フラマン語で「悪魔」の意。息子たちは早速、「神」や「天使」
の対極にあり、人に悪と苦痛をもたらす「悪魔」の名を、それまでの「ビクトリー・エール」という商品名に代え採用したのでした。
|
品、「デュヴェル・トリプルホップ
(Duvel Tripel Hop)」も限定醸造され、
この「新しい悪魔」も数日で完売に
なるほどの人気を博しました。今年
は「新しい悪魔」の再醸造も決定し、
「悪魔」はより多くの人びとを酔わ
せることになりそうです。
靴屋さんの真意は不明ですが、人
は「悪魔」を、案外憎からず思うのか
もしれません。
「ビールの中に悪魔がいる」とは言わないまでも、ビールの
魔力に魅せられた人は数限りないことでしょう。そんな中の 1
人、ベルギービールを世に広く知らしめた功績を称えられ、
1994 年、フィリップ皇太子からメルクリウス勲章を授与され
た人物を知っていて損はないでしょう。彼の名はマイケル・ジ
ャクソン。あの歌って踊ったポップの王様? いえいえ、この
方はまったくの別人。知る人ぞ知るビール界の大御所です。
ビールハンターの異名を持つ彼は英国生まれ。地方新聞の記
者からスタートし、ビールやウイスキーにもワインと同様のス
テイタスを! と数々の著書を出版、世界的に有名なライター
として活躍しました。その著書は約 15 カ国語に翻訳されてい
ます。また、ビール関係の協会の要職に就いたほか、ビールを
追求したドキュメンタリー番組を制作するなど、ビールの普及
に努めました。その功績により 1997 年、ベルギービールの騎
士団 (La Chevalerie du Fourquet des Brasseurs) の名誉騎士
に認証されました。
2007 年、残念ながら 65 歳の若さで この世を去りましたが、彼が生涯にわ
たり魅了されたビールとは、一体、何
だったのでしょうか。
その答えは今夜、皆さんの耳元で
「ビールの中の悪魔」がささやいてく
れるでしょう。 |
|