ベルギーのホットトピック　10月
自然災害にも補償が

　スマトラ沖地震と大津波からもうすぐ２年。ここ数年、洪水、地震、台風、竜巻、土砂崩れなど、世界各地での自然災害のニュースが絶えない昨今、ベルギーでの被害額も上昇を続けている。そんな中、今年3月、ようやく自然災害の被害を補償する保険が、これまでの火災保険の補償範囲を広げる形で各保険会社に義務付けられた。

実際、一連の自然災害保険の義務化法案はすでに1967年から検討されていたもので、約40年たってようやく実現したことになる。その間、各保険会社は様々な方法でこの部分の補償を規約から除外してきたのだが、とうとう逃げ道がなくなった。保険会社が自然災害に対する保険請負を嫌がるのは、頻度や被害額の一般的な確率統計がなかなか取れないからで、これまで被害者は災害補償基金のような、審査過程に長い時間と忍耐を要し、その結果、支払い拒否されることも多いシステムに頼るしか方策がなかった。

保険でカバーされるのは火災保険などと同じく規約で指定された物品への被害で、不動産に付帯設置されている暖房設備、電気水道設備などは対象外。また、地下室の床面から10センチ以下にある物品も対象外。それ以外にも破損したものの処分にともなう出費は、別の個別保険の対象となり、自然災害保険ではカバーされない。車両や庭の物置、建築中の家屋などがその例だ。　また、災害地域でよくある話が騒ぎに乗じた盗難や破壊行為なのだが、これらの被害は当然この保険の範囲外となる。
そして、この保険における最も重要な点は、いわゆる「リスク地域」での被害。国の担当機関がリスク判断を行い、地区ごとにランク付けをしているので、保険会社がリスクランクに応じて保険請負を拒否したり、保険料を割り増し請求したりすることができることになっている。

補償額の上限は災害の種類によって多少異なり、上限を超えた部分は国の災害補償基金が補填することになる。また、火災保険の中に含まれると言っても、当然保険料金の割り増しが請求される。法律では料金設定はされておらず、もっぱら市場価格原理が作用することに。会社によって設定方法はまちまちだが、一般地での保険料の割り増しは年間€15〜30ユーロ程度になりそうだ。対象物件がリスク地域に位置する場合には年間€100ほどの保険料になる地域も。補償最低額は€610かそれ以下と定められている。

今回の施行でベルギーは保険業界の競争状態を正常に保ったままでの新制度の導入に成功した。ドイツやオランダなど、この手の制度の整っていない隣国にとっての良いお手本になりそうだ。