幕前の物語

ベルフィオーレ伯爵は、恋人の侯爵令嬢ヴィオランテが不貞を働いたと思い込んで彼女を刺して逃亡した。しかし、ヴィオランテは一命を取り留め、ベルフィオーレ伯爵を探すためにサンドリーナと名前を変え、ラーゴネーロ市の市長官舎の女庭師となり、彼女の忠実な召使ロベルトも、ナルドと名前を変えて一緒に市長の家の従僕として雇われている。ドン・アンキーゼ市長は以前、市長官舎の女中セルペッタに結婚をほのめかすほどかわいがっていたが、今は女庭師サンドリーナ (＝侯爵令嬢ヴィオランテ) に夢中。さらに市長の姪のアルミンダは、恋仲だったラミーロを捨て、あろうことかベルフィオーレ伯爵と結婚することになった。

第1幕　

第1場　市長邸の庭園

市長の姪アルミンダの到着を待っている間、好色のドン・アンキーゼ市長 (テノール) は、自分の家に住み込みで働いている女庭師サンドリーナ (ソプラノ）を口説いている。サンドリーナは「ベルフィオーレ伯爵の誤解による嫉妬から刺され、ようやく身を落ち着けたと思ったらまた新たな悩みができてしまった」と忠実な召使ナルド (バリトン) に困惑して話す。ナルドは、思いを寄せている女中セルペッタを何とかものにしたいとアリアを歌って去る。

 第2場　回廊

到着したアルミンダ (ソプラノ) は、婚約者のベルフィオーレ伯爵がまだ来ていないので機嫌が悪い。ところが遅れて到着したベルフィオーレ伯爵 (テノール) がアルミンダに甘い言葉をかけると、あっという間にアルミンダの機嫌が直る。機嫌の直ったアルミンダは「浮気は許さないわ」と軽口をたたきながら出て行く。女中セルペッタ (ソプラノ) が現れて、ナルドを意識しながら「私の理想の夫は若いほうがいいわ」と当て付けて歌う。

 第3場　庭園

サンドリーナは、アルミンダから彼女の婚約者がベルフィオーレ伯爵であるということを聞いて気を失ってしまう。アルミンダの助けを求める声に駆けつけたベルフィオーレ伯爵も、そこに倒れている女性が自分が殺したはずの侯爵令嬢ヴィオランテにそっくりなので茫然自失 (ぼうぜんじしつ)。ベルフィオーレ伯爵はサンドリーナの前にひざまずいて許しを請うが、彼女は人違いだと主張して自分の正体を明かさない。アルミンダは、婚約者の伯爵に怒り、市長もサンドリーナを尻軽女と怒って、騒動となる。

 第2幕

第1場　市長邸前の広場

元恋人のラミーロ (メゾソプラノ) は、「あんな浮気な伯爵など捨てて、自分のところに戻って」とアルミンダを口説くが、アルミンダはベルフィオーレ伯爵のことをあきらめられず、その心がなぜか女庭師のサンドリーナに向いていることに気付いて怒っている。ベルフィオーレ伯爵はとりあえずアルミンダに許しをこうが、女庭師がもし本当にヴィオランテであるなら早まったことをしたかもしれないと後悔する。サンドリーナはベルフィオーレ伯爵に対して自分の正体をはっきりさせず、ベルフィオーレ伯爵が困惑するような言いかたをして翻弄 (ほんろう) している。しかし、やはりヴィオランテにうり二つだとベルフィオーレ伯爵は考える。甘い言葉で口説く市長にサンドリーナが応じないので、怒った市長は彼女を侮辱する。アルミンダが叔父である市長に「ベルフィオーレ伯爵は私に許しを請い結婚を求めてきたので、元通り彼と結婚する」と報告する。そこへラミーロが駆け込んできて、ミラノから書類が届き、ベルフィオーレ伯爵は侯爵令嬢の殺人犯として逮捕状が出ていると知らせる。もしもそれが事実なら、当然市長はアルミンダとの結婚を認めることはできない。

 第2場　市長邸の広間

市長の詰問 (きつもん) にベルフィオーレ伯爵は、｢嫉妬が原因で｣と罪を白状する。サンドリーナが「自分こそがその被害者のヴィオランテ侯爵令嬢であり、その私が許すのだから、ベルフィオーレ伯爵に罪はない」と主張するので、裁判は終了する。しかし、ベルフィオーレ伯爵と2人だけになるとサンドリーナは「あなたを救うために嘘をついたのであって、自分はヴィオランテではない」と言い張って去る。ベルフィオーレ伯爵はあまりのことにだんだん精神が混乱してくる。一連のもめ事の元凶が女庭師のサンドリーナにあると考えたアルミンダは、復讐をするためにサンドリーナを拉致して、野獣のいる暗い森に放置するよう手配する。セルペッタが「アルミンダがそう手配するのももっともだ」と呟くのを聞いたナルドが、サンドリーナを探しにいく。

 第3場　森の中

サンドリーナが森に拉致されたことを知った人たちが彼女を捜しに次々とやってくる。ところが、暗闇の中で誰が誰だかわからなくなり大騒動に陥ってしまう。そしてその騒ぎの中、ベルフィオーレ伯爵とサンドリーナの2人はとうとう正気を失って、気が触れてしまい大混乱となる。

 第3幕

第1場　市長邸の中庭

伯爵とサンドリーナはまだ狂ったままで、たまりかねたナルドが、月と星を指差してその隙に逃げるが、2人は月と星が落ちてくると逃げ出す。セルペッタが市長に「昔は私を幸せにしてくれると言ったのに」ともう1度試してみるが、市長にはその気がないのを確かめる。市長は、姪のアルミンダからはベルフィオーレ伯爵と結婚させてほしいと迫られ、ラミーロからはアルミンダと結婚させてほしいと迫られて困惑している。しかし、あまりにもかたくなな態度をとり続けるアルミンダに、遂にラミーロも怒ってしまう。

 第2場　庭園

サンドリーナとベルフィオーレ伯爵がだんだん正気に戻りつつある。サンドリーナは、伯爵に花嫁アルミンダの元に戻るよう言うが、2人はどうしても別れることができない。伯爵は皆の前で「この人が私の花嫁ヴィオランテ」と言い、彼女も過去の経緯 (いきさつ) を話すので、アルミンダは彼女を殺そうとしたことの許しを請い、さらにベルフィオーレ伯爵の心変わりを受けいれて、ラミーロのもとに戻り、セルペッタはナルドと結ばれて、女庭師万歳で幕となる。