宮殿で下女たちがエレクトラの噂をしている。エレクトラは王女であるが、父である王アガメムノンが、母である王妃クリテムネストラとその情夫エギストによって暗殺され、この２人からひどい扱いを受けていて、彼女自身も人目を避けて。下女が去った後、いつものようにエレクトラ（ソプラノ）が暗殺された父を嘆き悲しむ時間となり、「必ず父の敵を討って、妹クリソテミスと弟オレストとともに勝利の舞踏を踊るのだ」と叫ぶ。そこへ 妹のクリソテミス（ソプラノ）が、「王妃クリテムネストラと情夫エギストが、私たちを塔に閉じ込めようとしている」と警告して敵討ちを止めさせようとするが、エレクトラは嘲笑して妹を追い返す。

王宮から犠牲（いけにえ）奉献の行列が出てきて、王妃クリテムネストラ（メゾソプラノ）が現れる。毎夜悪夢に悩まされている彼女は、その身を宝石や護符で飾り、悪夢をみないためのあらゆる魔術を試している。最も有効な魔術は王女エレクトラだけが知っていると思い込み、従者たちを去らせエレクトラに訴える。エレクトラは、母の悪夢が、遠い所に住んでいる息子オレストが、いつか自分に復讐するという恐れであることを知っている。エレクトラは、母への憎悪に燃え、「悪夢をみないためには、父が殺された手斧であなたはオレストに殺されるのだ」と叫び、クリテムネストラは恐怖にあえぐ。そこへ、クリテムネストラの侍女が来て何か耳打ちすると、彼女の恐怖は勝利感に変わり、エレクトラを見返して王宮に入って行く。

妹のクリソテミスが、王女エレクトラに「見知らぬ老人と青年が、弟のオレストが死んだという知らせを持ってきた」と告げたことから、エレクトラは母の恐怖が勝利に変わった理由を知る。エレクトラは、今晩にも自分が敵討ちをする覚悟を決め、「私があの手斧で母を殺すから、お前は情夫エギストを絞め殺すのだ」とクリソテミスに懇願するが、恐怖にかられた妹は逃げ去って行く。

１人になった王女エレクトラは、地面に埋めておいた父が殺された時に使われた手斧を掘り始める。やがて、彼女は１人の男が自分を見ているのに気付き、何の用かと尋ねる。男は「自分は弟オレストの死を知らせに来た」と答え、そのぼろを着た女の悲しむ様子を見て、それが姉エレクトラであることが分かるが、エレクトラは、彼が本当は弟オレストであることに気付かない。オレスト（バリトン）は「オレストは生きているぞ」と叫び、オレストであると見破った数人の奴隷たちが彼の前に跪（ひざまづ）く。オレストは「奴隷たちでさえも私を知っているのに、私の姉には私が分からないのですか」と言う。エレクトラはオレストが生きていたことに歓喜し、オレストも復讐を誓う。

弟オレストの養育者である老人（バス）が現れ、２人は王宮に呼ばれる。王女エレクトラは、弟に斧を渡さなかったことを心配し歩き回る。そのとき、王宮から王妃クリテムネストラの悲鳴が聞こえる。エレクトラは悲鳴を聞いて現れた侍女たちをクリテムネストラの部屋に行かせないよう戸口に立つ。そこへ情夫エギスト（テノール）が現れたため、侍女たちは怖くなりエレクトラを残して去り、エギストは「光を持て」と言う。

復讐の歓喜に、王女エレクトラは松明（たいまつ）を持って情夫エギストの周りを踊りながら彼を戸口へと導く。中に入ったエギストは、やがて窓から助けを呼ぶが引き戻される。妹クリソテミスはエレクトラに弟オレストが遂に敵を討ったことを知らせる。エギストが死んだことを知って、彼を不満に思っていた人びとが立ち上がり戦いとなり、オレスト側の勝利となる。

妹クリソテミスは神をたたえる。王女エレクトラは、妹の呼び声に「この幸福の重荷を背負って黙って踊るのです」と叫び、そのままエレクトラは踊り死んでしまう。クリソテミスが 戸口を叩き弟オレストを呼ぶが、答えのないままに幕となる。